おててがくりーむぱん2


佑司の背中が、光恵の身体をかばっていた。
ショートカットの女性はすでにスタッフに取り押さえられ、「離してよ!」と騒いでいる。


「ミツ」
孝志は佑司の腕から光恵を引き離し、頬を挟んで顔を覗き込む。


「大丈夫か? 殴られたのか?」
光恵は衝撃を受けたような表情のまま、首を振った。


「ふざけんなっ。なに考えてるんだっ」
孝志は振り返り、騒いでいる女性を怒鳴りつけた。


光恵の身体を抱きしめる。
彼女の体温と暖かな呼吸を感じて、徐々に目が覚めて行く。
周りが見えて来た。


顔を上げて、見回す。


たくさんの報道陣。
「佐田さん、その方が写真の女性ですか?」
「どうして今日、その方がここにいるんですか?」
「どういうご関係ですか?」


瞬く光。
喧噪。


「孝志、孝志、孝志」
うめくように泣く、ショートカットの女性。


俺が今、彼女に怒鳴ってしまったんだ。


「す、すいません」
その女性に申し訳ない気持ちがわいてきて、孝志は彼女に手を伸ばそうとしたが、泣きわめく彼女はその手を振り払う。


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