おててがくりーむぱん2


「はーい」
光恵は白鳥先生の手を振りほどき、立ち上がった。


助かった!


光恵は白鳥先生に「すみません、失礼します」と言って、席を離れた。
事務を担当している野島さんが、座っている椅子をくるくると足で回しながら、手招きしている。


「なんでしょう?」
「明日、午前中って出てこられる?」
四十代半ばで、ちょっと髪が薄くなっている、けだるそうな野島がそう訊ねた。


「はい、大丈夫ですけど、なんでしょうか?」
「本社と繋がってるこのコンピュータ、一斉入れ替えなんだよ」
野島は疲れたというような表情を浮かべた。


「そうなんですか、随分旧式ですものね」
「うちは本社がそうしろって言ったら、そうするしかないもんな。なんだかシステムも新しくなるみたいで、俺、覚えるの自信ないよ」
「大変そうですね」
光恵は同情しているような素振りを見せた。


「皆川先生、コンピュータ詳しいだろ?」
「えっと、そうでもないですよ。文系ですし」
「でもこの間、無線つなぐのやってくれたじゃないか」
「はあ、あれくらいなら」
「俺、自信ないから、皆川先生に立ち会ってほしいんだよ」
野島は深いため息をついた。


それ、随分検討違いのお願いだけども。
わたし、本当にコンピュータに詳しいわけじゃないのに。


光恵は心の中でつぶやいた。

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