おててがくりーむぱん2


「光恵が不幸になるのを見てられないから」
「不幸になんか……」
「じゃあなんで今、そんな不安そうな顔をしてるんだ?」
「……」
「本当は結婚していいのか、迷ってるんだろ? 佐田さんのことを信じてない訳じゃないけど、この状況に自分が耐えて行けるのか、わかんないんだろ?」
「……」
「普通の家庭じゃない。戸籍上は家族でも、二人は赤の他人も一緒だ。誰からも祝福されない。子供は父親の顔を知らずに暮らす」
「やめてよ」
「覚悟が足りないよ。結婚はガキの恋愛じゃないんだ」


光恵の目がかあっと熱くなってくる。
泣いちゃだめ。
絶対に。


「俺と結婚しよう」
佑司が言った。


光恵は耳を疑った。涙を必死に堪えながら、佑司の真剣な顔を見上げた。


「何、冗談を言って……」
「冗談なんかじゃないよ。俺なら、佐田さんがあげられない幸せを、君にあげられる」
「……わたしたち、終わってるのよ?」
「終わっていても、もう一度始められる」
「……」
「もう二度と会わないと思っていた人と、再び巡り会った。意味があると思わないか?」
「そんなこと……」

そこでふっと、佑司の顔が緩んだ。


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