木曜日の貴公子と幸せなウソ


「あら、二宮さん。気が付きました?点滴も終わったので、帰っても大丈夫ですよー。インフルエンザは陰性だったので良かったですね」

「……あ、はい」


カーテンを開けて入って来た看護師さん。

私の左腕に刺さっていた点滴の針を抜く。

……よかった。

インフルエンザではなかったみたいで。


「風邪でもこじらせると大変な事になるので、無理しちゃダメですよ。では、お大事に」

「あ、はい。ありがとうございました……」


ゆっくりと起き上ると、点滴のおかげか、さっきまであったダルさがなくなった。

私は幼稚園の仕事着のままだった。

ジャージにトレーナー。

そして、子どもが喜びそうな、キャラクターもののエプロン。

……この格好で家に帰れというのはちょっと無理かな。

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