木曜日の貴公子と幸せなウソ
「萌の荷物は持ってきたから。園長先生がこのまま家に帰れだって」
「……え、でも」
「オレが家まで送るから」
「でも、エミちゃん……」
「エミは、ばあちゃんが迎えに行くから。元々その約束だったし」
……だって、先輩は奥さんのところに行くんじゃ?
そう考えたら胸が痛い。
「ほら、コート。着たら、オレに寄りかかっていいから」
コートを手渡されて羽織ると、先輩が私の腕をつかんだ。
「いえ、大丈夫です。自分で歩けま……す」
先輩の手を振り払って、立ち上がると、言い終わらないうちによろけた。
すぐに私の腕をグッとつかんだ先輩。
「大丈夫じゃない。責任持って送るから」
「責任って……」
「風邪をひかせた責任」
そんな責任持たなくていい。
先輩にはもっと重要な責任があるでしょ……?