木曜日の貴公子と幸せなウソ


そっと邦章は私の頭をなでてくれた。

その仕草にドキッとして、私は口元まで布団を引き寄せた。

顔が赤くなったのを見られたくなかったからだ。


「……なんか、下らない遠回りしたな、オレ達」

「……うん」


遠回り……。

確かにそうかもしれない。

誤解で終わった恋だったけれど、再会してからはお互いに下らない見栄を張って、素直にならなかった。

邦章は私に対してささやかな復讐。

そして私は必死に大人ぶろうとしていた。


でも、それがあったから、邦章の事がずっとずっと好きだったって再確認ができたし、抑え込もうとしても止められないほど、大きな気持ちだったんだってわかったんだ。

だから、遠回りは決して無駄じゃなかった。

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