木曜日の貴公子と幸せなウソ


「……少しだけいい?」

「え?」


その言葉に反応して、掛布団から顔を出すと、邦章がそっとキスをした。


「……風邪うつるよ?」

「大丈夫。だから、あと少しだけ……」

「ん……」


今度はさっきよりも長いキス。

その心地よさに私はゆっくりと目を閉じた。


再会して最初にキスをした時は、驚きと怒りでいっぱいだった。

既婚者のくせにって、ずっと思っていた。

それが、全くの誤解だったことに、今思えば笑えてくる。

邦章の言う通り、どれだけの発想力だったんだろう?

……でも、邦章の意地悪から、始まったんだから仕方ないよね?


「このまま少し寝たほうがいい。起きたらココアいれるよ」

「……うん」


目が覚めても、自分の部屋じゃありませんように……。

< 199 / 207 >

この作品をシェア

pagetop