木曜日の貴公子と幸せなウソ


私は成瀬先輩に何も聞いていない。


あの人は誰ですか?

私との約束を断って、その人と会わなきゃいけない理由は何ですか?


問い詰めるのなら、こんな風に。

だけど、そんな事を聞けるはずもなかった。

先輩から『終わり』を告げられるのが怖かったのかもしれない。

成瀬先輩の事が、心の奥底から好きになってしまっていたから。


私が何も言わなければ、先輩との仲は壊れる事はない。

いつまでも穏やかに、この時間は続いて行く。

そう、絶対に大丈夫……。

私は先輩の事を信じていればいい。

誰が何と噂をしようとも……。


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