木曜日の貴公子と幸せなウソ
そう強く自分に言い聞かせるけれど、やっぱり心のどこかで疑ってしまう。
フワフワのロングの髪の可愛い女の子。
私が並ぶより、彼女が成瀬先輩の隣に並んだ方がお似合いだった。
痛みと共に広がっていくのは、黒い感情。
……嫉妬?
独り占めしたいという強い思い?
どちらにしても、決して綺麗とは言えないモノだった。
「萌、何か最近元気ないね」
「え?そ、そんな事ないですよ!」
3学期が始まって、最初の週末。
駅前のカフェで、成瀬先輩と並んで座る。
テーブルに置かれたキャメルマキアートが湯気と共に、甘い香りをただよわせていた。
「そうかな?最近、あんまり笑ってるのを見てない」
「え、そうですか……」
先輩に言われて、私は無理やり笑った。