アルマクと幻夜の月



スルターナの部屋の窓からは明かりが漏れている。

アスラは外からスルターナがいることを確認すると、自室から持ってきていた水晶の置物を躊躇なく窓に投げつけた。


けたたましい音を立てて窓ガラスが割れる。

次いで、スルターナや侍女たちの悲鳴が響いた。


アスラは馬の背を蹴って窓から部屋へ飛び込んだ。

スルターナが衛兵を呼ぶのにもかまわず、走りながら腰に差したジャンビーヤを抜く。

そして実に鮮やかな身のこなしでスルターナに掴みかかると、壁に叩きつけて喉元に刃を突きつけた。


部屋の中が一瞬にして静まり返る。

外から衛兵たちの怒鳴る声が聞こえて、なぜ入ってこないのか不思議に思って扉の方を見ると、

いつのまに人型に戻っていたイフリートが内側から鍵をかけていた。


< 109 / 282 >

この作品をシェア

pagetop