アルマクと幻夜の月



「まさかこんなにうまくいくとは思わなかったけど、大成功だ。ありがとうな、イフリートもシンヤも」


にんまり笑って言うアスラに、イフリートは小さなため息を吐くと、

「豚の血まみれで言われてもな」

と、疲れきった表情で言って、アスラに向けて億劫そうに手をかざす。


次の瞬間には、アスラの頭からつま先までをぐっしょりと濡らしていた血は綺麗さっぱり消えてなくなっていた。


「おまえ、こんなこともできるのか」


アスラの言葉に、イフリートは肩をすくめただけだった。

「〈イウサール〉の者たちに終わったと伝えてくる」と言って、部屋から出て行く。


すべてが終われば、〈イウサール〉の者たちに領主の館のものを好きなだけ盗ませるという約束だ。

皆これから嬉々として金銀を漁りに行くのだろう。


その背中を見送ってから、シンヤが口を開いた。


「それにしても、すごいな、あんた。どうやったんだ? そろそろ教えてくれよ」


興味津々、という顔で見つめられて、アスラは苦い顔をする。

イフリート以外の者たちには、作戦の詳細を伝えていなかったのだ。


魔法などというとんでもないものを使う手前、人に説明するのをできるだけ避けたかったからだ。



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