アルマクと幻夜の月


「このままでは、ばかな小娘がこの私を無能だと勘違いし、その上この私を不要だと、愚かしいことを言いそうだからな」


イフリートは、ふん、と鼻を鳴らすと、大きな手でアスラの両目を隠す。


「いいと言うまで目を閉じていろ」


アスラが何か言うよりも早く、パチン、と指を鳴らす音が耳に届く。

すると、魔法でも使ったのだろうか、いくら力を込めても、アスラのまぶたはアスラの意思で開かなくなっていた。


「おまえ、あたしに何を……」

「少し黙っていろ」


低い声と同時に、生温い風がアスラの足元を撫でる。

それは瞬く間に強い風になり、アスラをふわりと持ち上げた。

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