アルマクと幻夜の月


「……衛兵、かもしれない。あたしを探してる。王宮にいないのが知れたのか」


イフリートは、ひょい、と片眉を上げて、不思議そうな顔でアスラを見る。


「どうせ王宮に帰るのだろう? 見つかるとまずいのか?」


「そりゃあまずいさ。こっそり出てきて、こっそり帰るつもりだったんだ。

あたしが王宮を抜け出したのが見つかったら、また母上の立場が悪くなる」


そうか。イフリートはそう言うと、アスラの方へ歩み寄った。


何だ、と言いたげな怪訝な顔のアスラに小さく笑ってみせると、

美貌の魔人は「そういうことなら、なんとかしてやらなくもないぞ」と言った。

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