アルマクと幻夜の月

「では、」

一つ息をつくと、ルトはアスラの手から果物を受け取って腕に抱えた。


「ぼくはそろそろナズリ様のお部屋に参りますね。姫はどうされますか?」


一緒に来るか、と、おなじみの質問をするルトに、アスラはやはりいつものように首を横に振った。


「あたしはいいさ。……行っても、母上はあたしにお会いにならないだろうし」


ルトはそれ以上はなにも言わず、「では、失礼します」と言ってアスラの部屋を出ようとする。


その小さな背中を追いかけるように、アスラは小さく声をかけた。


「いつもありがとうな、ルト」


立ち止まって振り返ったルトはいたずらっぽく笑って、

「今さらですよ」

と、生意気なことを言い残し、今度こそ部屋を出ていった。
< 6 / 282 >

この作品をシェア

pagetop