アルマクと幻夜の月

*第一夜 2*

アスラ・アルマクはアルマク王朝第十一代国王マリク二世の娘であり、アルマクの第一王女である。


王子も含めた兄弟姉妹たちのなかでは最年長であり、

本来であればもうじき他国の王子か有力貴族の子息にでも嫁ぐ年頃であるのに、アスラのもとには縁談の一つも来ない。


その理由は一つ。アスラが王宮で孤立しているためである。


アスラの母であるナズリはマリク二世のハレム(後宮)のなかでも一等身分が低い。

他の側室たちは身分の低い者でも地方貴族の娘であるにもかかわらず、彼女はもとは給女であった。

そのくせ国王の寵愛を一身に受けているため、他の妻――特に宰相家の娘である正妃スルターナはナズリを相当に忌み嫌っている。
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