アルマクと幻夜の月

そういうわけで、アスラは王宮内では孤立して従者や親衛の一人も持たずにいる。

もちろん、王宮内でほとんど何の権限も持っていない姫など、誰も嫁に迎えたいとは思わない。


とはいえ、アスラが孤立しているのには、アスラ自身の性情にも原因がある。


言葉遣いは荒々しく男のようで、豪華なドレスなど一切身に着けず、

「楽だから」という理由で踊り子のような身軽な服装で王宮内をうろつく。

おまけに女の身であるのに常にジャンビーヤ(短剣)を腰に差しているのだから、だれも恐ろしくて近寄れない。

これでは嫁の貰い手などあるはずもない。
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