アルマクと幻夜の月

男勝りで快活、豪胆にして破天荒。

およそ王女らしくない彼女には、およそ王女らしくない綽名がついている。


曰く、「こそどろ姫」と。


スルターナが厨房の者を抱き込んでアスラに食事を届けさせないように嫌がらせをしたときに、

アスラが厨房に忍び込んでスルターナのために用意された食べ物を盗んだことがその綽名の始まりだ。


以来、アスラは気が向いては厨房に忍び込み、食べ物を盗んではルトに指示して病床に伏せたナズリに届けさせている。


なぜ自分で行かないかと言うと、ナズリがアスラに会いたがらないからだ。

幼い頃はアスラをそばに置いて離さなかったナズリが、近頃になって急にアスラを遠ざけるようになった。

それが何故なのか、アスラもルトも知らない。
< 9 / 282 >

この作品をシェア

pagetop