僕を止めてください 【小説】
怒涛の2泊3日を終えて清水センセの家から帰ると、翌日から仕事が始まった。そこを見計らったように寺岡さんから連絡が入った(きっと幸村さんからの情報だろう。清水センセの件は話したのだろうか?)。土曜日の昼頃着く新幹線の席を予約したから迎えに来いと言われた。本当に来るのかと思うと不思議な気持ちになった。私が行くまでちゃんと耐えるんだよ?と念を押され、善処しますとしか言えない僕に寺岡さんは不穏な提案をした。
(じゃあ、君の彼氏に土曜まで毎晩裕んちに泊まってあげてもらえるように言っておいたげる。毎晩抜いてもらいなよぉ。少しは気が紛れるでしょ?)
バカなこと言ってないで寺岡さんが僕に毎晩電話して下さい、と抗議すると、隆に浮気相手にコッソリ電話してるとか思われんのヤダもん! とにべもなく断られた。結局、幸村さんが毎晩嫌味たっぷりの電話を掛けてくることになった。電話の内容には多分に放火事件の進展が含まれていた。三人ともそれぞれ自作自演だったことをようやく自白し始めたらしい。そしてその裏で指示を出していたのは例の闇金だったと。
*
「29! 時間の経つのは早いねぇ……隆に会わせたいなぁ! この姿見せたいよ。ほんと見せてやりたい。ちゃんとしてる……いつの間にかちゃんとしちゃってさぁ…また会えるって思ってたけどさ。会えたよ。また会えた。長かったぁ!」
「ええ…あの……あれ」
照れ隠しにそう言って僕が指差すと、寺岡さんは苦笑しながら腕を緩めてスーツケースに駆け寄り回収した。
「もう! ムードぶち壊しだよ。変わんないな、そういうとこ!」
寺岡さんは再びスーツケースを引っ張って僕の隣に並ぶと、僕をにらみながら肘で脇腹を突付いて、ニヤッと笑った。
「誰かが持ってっちゃうかと思うと気が気じゃなくて」
「このドラマチックバスターめが。ところでヌエヴォってこっちでいいの?」
ヴィラ・ヌエヴォは元大名屋敷の広大な庭園に建っている会員制の温泉付きリゾートホテルだ。寺岡さんはそこの会員とかで、有名な観光地に高級感抜群の系列のリゾートホテルがいくつかあるそうだ。さすが有名大学の教授様は違う。そこにそんなものがあるとは、寺岡さんが泊まるというのを聞いて初めて知った次第である。もちろん幸村さんは当たり前に知っていたが。
(じゃあ、君の彼氏に土曜まで毎晩裕んちに泊まってあげてもらえるように言っておいたげる。毎晩抜いてもらいなよぉ。少しは気が紛れるでしょ?)
バカなこと言ってないで寺岡さんが僕に毎晩電話して下さい、と抗議すると、隆に浮気相手にコッソリ電話してるとか思われんのヤダもん! とにべもなく断られた。結局、幸村さんが毎晩嫌味たっぷりの電話を掛けてくることになった。電話の内容には多分に放火事件の進展が含まれていた。三人ともそれぞれ自作自演だったことをようやく自白し始めたらしい。そしてその裏で指示を出していたのは例の闇金だったと。
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「29! 時間の経つのは早いねぇ……隆に会わせたいなぁ! この姿見せたいよ。ほんと見せてやりたい。ちゃんとしてる……いつの間にかちゃんとしちゃってさぁ…また会えるって思ってたけどさ。会えたよ。また会えた。長かったぁ!」
「ええ…あの……あれ」
照れ隠しにそう言って僕が指差すと、寺岡さんは苦笑しながら腕を緩めてスーツケースに駆け寄り回収した。
「もう! ムードぶち壊しだよ。変わんないな、そういうとこ!」
寺岡さんは再びスーツケースを引っ張って僕の隣に並ぶと、僕をにらみながら肘で脇腹を突付いて、ニヤッと笑った。
「誰かが持ってっちゃうかと思うと気が気じゃなくて」
「このドラマチックバスターめが。ところでヌエヴォってこっちでいいの?」
ヴィラ・ヌエヴォは元大名屋敷の広大な庭園に建っている会員制の温泉付きリゾートホテルだ。寺岡さんはそこの会員とかで、有名な観光地に高級感抜群の系列のリゾートホテルがいくつかあるそうだ。さすが有名大学の教授様は違う。そこにそんなものがあるとは、寺岡さんが泊まるというのを聞いて初めて知った次第である。もちろん幸村さんは当たり前に知っていたが。