僕を止めてください 【小説】
「いやー、足疲れたわ。靴脱ごう」
「いや……あの……こんなホテル泊まったことないです」
部屋の広さと家具の豪華さに、僕は再びひるんだ。立派な高級応接セットと大画面の壁掛けテレビ。寝室は別の部屋なのだろう。ベッドなどここからは見えやしない。正月に幸村さんと泊まったラブホすら高級感で多少落ち着かなくて、慣れるまでどぎまぎしてるくらいなのに。あれの10倍くらい内装もインテリアもラグジュアリーである。
「突っ立ってないで座ったら?」
「あ、え、はい」
すでに豪華なロングソファに仰向けに倒れている寺岡さんの向かいに遠慮がちに腰をおろすと、寺岡さんはネコのように伸びをして、長丁場の新幹線で固まった関節をほぐしているようだった。
「あー遠かった! 3時間半は遠いよぉ」
「離れたかったんで。遠いですよ、ここは」
「……離れたかったのか。まぁ、仕方ないけど」
「ところで、幸村さんが来る前に、ちょっと話しておきたいことがあって……」
それを聞くと、寺岡さんはムクっと起き上がった。
「なに? 不穏な話し?」
「不穏といえば不穏ですが……いや、けっこう心温まるはなし…? なのかな? 頭はおかしいですけど」
「いや、裕くん、全然わかんないよ」
「僕もこの事態への評価はまだ出来てないので、なんというか、寺岡さんに聞いてもらえると助かるというか。ほら、状況の分析には昔から定評があるので」
「まぁそうだけど」
そのことを黙って今回の話をする気力がないおかげで、なし崩し的に彼のことを話し始められそうだった。
「いや……あの……こんなホテル泊まったことないです」
部屋の広さと家具の豪華さに、僕は再びひるんだ。立派な高級応接セットと大画面の壁掛けテレビ。寝室は別の部屋なのだろう。ベッドなどここからは見えやしない。正月に幸村さんと泊まったラブホすら高級感で多少落ち着かなくて、慣れるまでどぎまぎしてるくらいなのに。あれの10倍くらい内装もインテリアもラグジュアリーである。
「突っ立ってないで座ったら?」
「あ、え、はい」
すでに豪華なロングソファに仰向けに倒れている寺岡さんの向かいに遠慮がちに腰をおろすと、寺岡さんはネコのように伸びをして、長丁場の新幹線で固まった関節をほぐしているようだった。
「あー遠かった! 3時間半は遠いよぉ」
「離れたかったんで。遠いですよ、ここは」
「……離れたかったのか。まぁ、仕方ないけど」
「ところで、幸村さんが来る前に、ちょっと話しておきたいことがあって……」
それを聞くと、寺岡さんはムクっと起き上がった。
「なに? 不穏な話し?」
「不穏といえば不穏ですが……いや、けっこう心温まるはなし…? なのかな? 頭はおかしいですけど」
「いや、裕くん、全然わかんないよ」
「僕もこの事態への評価はまだ出来てないので、なんというか、寺岡さんに聞いてもらえると助かるというか。ほら、状況の分析には昔から定評があるので」
「まぁそうだけど」
そのことを黙って今回の話をする気力がないおかげで、なし崩し的に彼のことを話し始められそうだった。