僕を止めてください 【小説】
「びっくりした。幸村さんも見たのかと思った」
「見てないです。見せたらAさんの通販も佳彦もお縄になっちゃうんで」
「いっそ捕まったほうが良くない?」
「まぁ、それも有りかもとは思いましたけど、清水センセがいの一番に捕まります。あと、佳彦が捕まると、関係のあった小島さんまで巻き込まれやしないかと心配で…」
「わかってるよ。私だって話せないよ、こんなこと。でさぁ、なんで清水センセは裕を見つけられたの?」
「偶然です。でも探し続けて苦節13年? とか言ってました。半ば諦めてたら故郷に僕が就職してたと」
「ここ、清水さんの地元なのね」
「高校生の時まで居たみたいです」
「清水さんは裕のことが好きなんでしょ?」
「ええ、溺愛されてます」
「幸村さんと三角関係ってことだよね?」
「うーん、そうなのかなぁ」
「あ、裕はどうせどっちも好きでも嫌いでもないのか、また」
「まぁ、そうですが、清水センセには恩義がありますので、ちょっと僕にとっては特殊なんですよね」
「えぇー! とうとうそんな気持ちになったの!?」
寺岡さんはびっくりした様子で僕を指差しながらそう言った。
「もちろん幸村さんにも感謝はあるんですが……なんというか……清水センセはセックス嫌いだし、屍体好きだし、霊園を話しながら散歩してるだけで楽しいんで」
「うわぁー友達ってことか」
「友達なんですかね。清水センセは恋だって言い張ってるんですが、なにしろ性欲は湧かない人なので。小島さんの定義では『勃起なき恋愛はない』とのことですので」
「あれは大雑把過ぎて参考になんかなんないよ。セクシャリティにはもっと色々種類があんのよ。あんたたちはアセクシャルとかアロマンティックとかノンセクシャルとかそういうのだと思うけど?」
「え、そんな分類があるんですか?」
「知らないかな。自分のこともう少し深掘れよ」
「話したくないんでね、セックスについて。それも清水センセと共通の方向性です」
「彼はなんでセックス嫌いなの?」
「幼少のトラウマで」
「それは?」
「あー、えー…僕が言ったことこれも絶対内緒でって約束してくれたら言いますが」
「言わないよ。約束する」
「絶対ですよ。あのですね、小3から母親から性的虐待を受けてて」
「うわ。最悪だな」
「すごく残酷でひどい話なんです。なにがあったかはこれ以上詳しくは言えませんが、彼、ちょっと心の底に狂気があって、そのせいだと思います。母親は小6のときに亡くなっていて、頓死されたということです」
そこで寺岡さんは黙った。ちょっとの間考え事をするような風をしてたが、机の上の『Suicidium cadavere』に目を落としながら口を開いた。
「見てないです。見せたらAさんの通販も佳彦もお縄になっちゃうんで」
「いっそ捕まったほうが良くない?」
「まぁ、それも有りかもとは思いましたけど、清水センセがいの一番に捕まります。あと、佳彦が捕まると、関係のあった小島さんまで巻き込まれやしないかと心配で…」
「わかってるよ。私だって話せないよ、こんなこと。でさぁ、なんで清水センセは裕を見つけられたの?」
「偶然です。でも探し続けて苦節13年? とか言ってました。半ば諦めてたら故郷に僕が就職してたと」
「ここ、清水さんの地元なのね」
「高校生の時まで居たみたいです」
「清水さんは裕のことが好きなんでしょ?」
「ええ、溺愛されてます」
「幸村さんと三角関係ってことだよね?」
「うーん、そうなのかなぁ」
「あ、裕はどうせどっちも好きでも嫌いでもないのか、また」
「まぁ、そうですが、清水センセには恩義がありますので、ちょっと僕にとっては特殊なんですよね」
「えぇー! とうとうそんな気持ちになったの!?」
寺岡さんはびっくりした様子で僕を指差しながらそう言った。
「もちろん幸村さんにも感謝はあるんですが……なんというか……清水センセはセックス嫌いだし、屍体好きだし、霊園を話しながら散歩してるだけで楽しいんで」
「うわぁー友達ってことか」
「友達なんですかね。清水センセは恋だって言い張ってるんですが、なにしろ性欲は湧かない人なので。小島さんの定義では『勃起なき恋愛はない』とのことですので」
「あれは大雑把過ぎて参考になんかなんないよ。セクシャリティにはもっと色々種類があんのよ。あんたたちはアセクシャルとかアロマンティックとかノンセクシャルとかそういうのだと思うけど?」
「え、そんな分類があるんですか?」
「知らないかな。自分のこともう少し深掘れよ」
「話したくないんでね、セックスについて。それも清水センセと共通の方向性です」
「彼はなんでセックス嫌いなの?」
「幼少のトラウマで」
「それは?」
「あー、えー…僕が言ったことこれも絶対内緒でって約束してくれたら言いますが」
「言わないよ。約束する」
「絶対ですよ。あのですね、小3から母親から性的虐待を受けてて」
「うわ。最悪だな」
「すごく残酷でひどい話なんです。なにがあったかはこれ以上詳しくは言えませんが、彼、ちょっと心の底に狂気があって、そのせいだと思います。母親は小6のときに亡くなっていて、頓死されたということです」
そこで寺岡さんは黙った。ちょっとの間考え事をするような風をしてたが、机の上の『Suicidium cadavere』に目を落としながら口を開いた。