ビター・スウィート
「はい……広瀬先輩がしあわせで、私も幸せです」
こんな穏やかな気持ちで見守れたのは、きっと、真っ直ぐで優しいあなたが隣にいたから。
「ちとせ」
不意に呼ばれた名前と、差し出された大きな手。
指の長い無骨なその手に、私がそっと自分の手を重ねると、彼はぎゅっと握り手を引き歩き出す
溢れ出す、しあわせ。
「し、凌さん」
「へ?」
「って……呼んでも、いいですか?」
一歩、一歩と近づくように、呼んだ名前。その言葉に彼はふっと優しい笑顔を見せる。
「いいよ、ちとせ」
怖い顔に声も大きい、言葉も荒くて口うるさい。意地悪で、悪魔のような人。
だけどそれがあなた。それが、内海さんだから。
全部が愛しくて、大好き。
つないだ手を離さずに歩いて行けば、きっと甘いばかりではない日々。
これから何度も、悪魔なあなたにへこまされて、泣いてしまうだろう。
だけど、それでも優しい指先が、涙を拭ってくれるから。不器用に、愛を伝えてくれるから。
私は明日もあなたに
苦くて甘い、恋をする。
end.


