専務が私を追ってくる!
目にワンデーのコンタクトを入れ、ヘアメイク道具を収めたボックスを持って寝室へ。
オーソドックスな装いに徹してきたため、久しぶりにフェミニンでエレガントな衣服をまとった自分に違和感を感じる。
アイメイクをするのも久しぶりで、乾いたアイライナーの筆を復活させるのに手間取ってしまった。
アイシャドーはピンクブラウンをベースにグラデーションにして、ラインを少し跳ね上げて猫目に。
ビューラーでしっかり上げたまつ毛に、マスカラを丁寧に重ねていく。
唇にオレンジベージュのグロスルージュを乗せ、最後にふわっとチークを入れると、本当に別人のような過去の自分が現れた。
これだけ変わるのだから、修が私に気付かないのも無理はない。
ヘアアイロンで髪を軽く巻き、ピアスやネックレス、腕時計などのジュエリー類を装備。
最後に香水をシュッと吹きかけて、完成だ。
鏡越しに、懐かしい美女が映る。
彼女を見つめながら、微笑んでみたり眉間にしわを寄せてみたり。
自分が動いたのと同じように動く彼女を見て、安心する。
大丈夫、私はまだ、着飾りさえすればちゃんと美しくなれる、と。
自分を内面を変えるために削ぎ落としてきた自尊心。
だけど、いつでも元の華やかな私に戻れるくらいには残しておきたい。