キスから始まる方程式
「南條……」
南條さん……。
翔が彼女の名前を呼ぶ。
たったそれだけのことなのに、胸がチクリと痛んだ。
「風間君、おはよう」
「あぁ、おっす」
「結城さんもおはよう」
「お……はよ……」
私と翔にニッコリと笑いかけ、交互に挨拶を交わす。
そして、いつものように自然に翔の隣へと歩み寄り、学校へと続く道を再び歩き始めた。
彼女の名前は南條 詩織(なんじょう しおり)。
彼女もまた、私と同じ高校に通う二年生だ。
艶やかな黒髪ストレートのロングヘアに透き通るような白い肌、形のよい桜色の唇や頬がなんとも可愛らしい。
見るからに清楚な雰囲気を漂わせている彼女は、実生活も見た目通りおしとやかで物静か。
性格も真面目で女の子らしく、私とは正反対のタイプだ。
成績優秀・容姿端麗な校内一の『美少女キャラ』として、男子生徒からの人気も絶大だった。