キスから始まる方程式


「南條……」



南條さん……。



翔が彼女の名前を呼ぶ。


たったそれだけのことなのに、胸がチクリと痛んだ。



「風間君、おはよう」

「あぁ、おっす」

「結城さんもおはよう」

「お……はよ……」



私と翔にニッコリと笑いかけ、交互に挨拶を交わす。


そして、いつものように自然に翔の隣へと歩み寄り、学校へと続く道を再び歩き始めた。




彼女の名前は南條 詩織(なんじょう しおり)。


彼女もまた、私と同じ高校に通う二年生だ。


艶やかな黒髪ストレートのロングヘアに透き通るような白い肌、形のよい桜色の唇や頬がなんとも可愛らしい。


見るからに清楚な雰囲気を漂わせている彼女は、実生活も見た目通りおしとやかで物静か。


性格も真面目で女の子らしく、私とは正反対のタイプだ。


成績優秀・容姿端麗な校内一の『美少女キャラ』として、男子生徒からの人気も絶大だった。
< 12 / 535 >

この作品をシェア

pagetop