キスから始まる方程式
……お礼、言えなかったな……。
二人の少し後ろを、とぼとぼと付いて行くように歩く私。
先程までの幸せが、まるで夢だったかのように思えてくる。
楽しそうに笑う翔と南條さん。
そんな二人を見ているだけで、息ができないくらい胸が苦しかった。
翔の隣は、昔からずっと私の定位置だったのにな……。
ふと昔の懐かしい光景が頭に浮かぶ。
あの頃はまさか、こんなふうに自分以外の人間が翔の隣にいることになるなんて思いもしなかった。
でもいくら懐かしんでも、もうあの頃には戻れない。
だって、翔の隣を彼女に渡したのは他の誰でもない。
そう……
―― 私自身なのだから……。