キスから始まる方程式
あれ? 今回は完全に回避したはずなのに……。なんで悲鳴が……?
そう思ったと同時に頬に感じる温かくて柔らかな感触。
いったい何が起こっているのかわからない。
え……? なんかみんなこっち見てる……。それにこの感触……まさか……っ!?
気が付いた時には既に手遅れで、桐生君の唇が私の頬から離れたあとだった。
「っ!?!?」
いいい、今っ、もしかしてほっぺにチューされたっ!?
左頬を手で押さえ、目を見開いたまま桐生君の方を振り返る。
「んだよ。今回はほっぺただからべつにいいだろ?」
「っ!!」
よくない! 全っ然、ちっともこれっぽちもよくないっ!!
顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら、怒りのこもった目で抗議をするように桐生君を睨む。
恥ずかしさと驚きのあまり、声が声にならない。
だが、そんな私にはおかまいなしに
「まっ、そーゆーことだから」
桐生君が私の腰を抱いたまま女の子達に向き直り、最終確認とでもいうようにそう念を押したのだった。