キスから始まる方程式
この状況って、いくらなんでもすっごくやばいんじゃ……。
押し寄せる不安を抑えつつ女の子達の方を見やると、皆衝撃のあまり目を見開いたままその場に立ちすくんでいる。
とても現実を受け入れられない様子だ。
「な……な……なっ……! 冬真のバカっ!」
やがて一人の女の子の発言を皮切りに、女の子達が一斉に怒り出した。
「もう冬真なんて知らないんだからっ」
「アタシもう追っかけやめるっ」
「あとで後悔したって遅いんだからねっ」
各々好き勝手に桐生君に怒りをぶつける女の子達。
そんな怒号にも相変わらず桐生君は涼しい顔をしている。
ようやくひとしきり怒りをぶつけ終わると、リーダーらしき女の子がもの凄い形相で私を睨みつけ
「あんたのこと絶対認めないから!」
そう言葉を吐き捨て勢いよく集団で走り去って行った。
「…………」
「…………」
女の子達の勢いに気おされ、呆然と互いに目を見交わす私と桐生君。
やがて冷静さを取り戻し我に返った私は、桐生君に腰を抱き寄せられたままなのをようやく思い出した。