キスから始まる方程式
ようやくのことで、ヨロヨロと家の前に辿り着いた私と翔。
「七瀬……」
「うん? どしたの?」
ゼーゼーと肩で息していた私は、突然立ち止まった翔に名前を呼ばれた。
いつになく真剣な面持ちで地面に視線を落とし、そのまま黙り込む翔。
その表情はむしろ、なにかを思いつめているようにも見えた。
「えっ? やだ、ちょっと翔、いったいどうしちゃったの?」
「……」
ワケがわからなくて苦笑いをしながら問いかけるが、それでも翔は一向に口を開こうとしない。
翔どうしちゃったんだろう……?
今朝会った時は別に普通だったよね……?
それとも私、知らないうちに何か翔の気に障るようなこと言っちゃったかな?
慌てて自分の言動を振り返ってみたが、特に翔が怒りそうな言葉を発したとも思えなかった。