キスから始まる方程式
ひとり取り残された私は、しばらくそのまま呆然と立ち尽くしたあと、完全に停止した思考のまま家へと向かって歩き出した。
翔が当たり前のようにそばにいて笑いかけていてくれたことが、なんだか途方もなく遠い昔のように思える。
彼女とまではいかないまでも、まさか『幼なじみ』としてさえもそばにいられない日がくるなんて、さすがの私も夢にも思わなかった。
「私いったい……どこで間違えちゃったんだろう……」
いくら考えても答えは出ないし、もちろん誰も教えてくれない。
吐き出される白い息が暗闇に霧散するたび、私と翔のかけがえのない大切な日々も一緒に消えて行くような気さえした。
ろくに前も見ずに、それでも俯きながらとぼとぼと歩き続ける。
「七瀬?」
そんな中、校門を出たところで不意に誰かから声を掛けられた。