キスから始まる方程式
「……?」
いつもの何倍も重く感じる頭をゆっくりと上げる。
虚ろな私の瞳に映ったのは、寒そうに腕組みをしながら校門の石塀に寄りかかる桐生君の姿だった。
「ったくお前、おせ~っつ~の! 他のバレー部の奴らはとっくに帰っちまったぞっ」
「桐生君……」
「凍え死にそうだぜ」と両腕を手でさすり鼻をすすりながら、不満げに呟く桐生君。
初めは文句を言っていた桐生君も、気持ち悪いくらいに静かな私を怪訝に思ったのか、不思議そうに首を傾げながらそばに寄って来た。
「七瀬……なんかあったのか?」
「…………」
桐生君の問いかけにも、まるで声を失ったかのように何も言葉が出てこない。
「七瀬……?」
そんな私の左肩に桐生君が手を置き、心配そうに顔を覗き込んできた。