キスから始まる方程式


「なんで……追いかけてくるのよ……」



目を合わせず俯いたまま、私がポツリと呟く。



「ばっか。んなの決まってんだろ? 好きな女が泣いてんのにほっとけるかよ」

「っ!!」



さも当たり前のように、迷うことなく即答する桐生君。


けれど今の私には、その言葉を簡単に受け入れることができなかった。



「なんで……?」

「?」

「なんでそんな簡単に『好き』とか言うの?」

「七瀬?」

「第一桐生君なんて、ついこの間まで私のことなんて知りもしなかったじゃないっ。
なのになんでそんな私のことを好きなんて思えるの!?」

「……」

「そんなの絶対おかしいよっ!」



翔はあんなにずっと一緒にいても、私を幼なじみとしてしか見てくれないのに……。


子供の頃の大事な約束だって、簡単に忘れちゃったのに……!



やり場のない憤りが私の中に溢れ、気が付くと私は桐生君に当たり散らしていた。
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