キスから始まる方程式
「っつ~……! いったたた~……」
派手に打ち付けた膝をさすりながら、慌ててよろよろと立ち上がる。
「んもう……いったい何につまずいたんだろ? こんな所にあんな大きな物置いといたら危ないじゃない」
ぶつける相手もいない不満をブツブツとこぼしながら、鞄に入れてきた懐中電灯を取り出す。
親指でカチッと電源スイッチを入れると、オレンジ色の淡い光線が草むらに小円を映し出した。
「指輪探す前にさっきつまずいた物、危ないから一応確認しとくか……」
1分1秒でも時間が惜しい時になんとも面倒だが、この際仕方ない。
またつまずいて転ぶのだけは願い下げだ。
そう思った私は、渋々と懐中電灯の明かりを先程私が転がった付近へと向ける。
「ん~と……この辺だっけ? ……って……へっ!?」
微妙に心もとない明かりが、何か大きな物体をとらえる。
更に近付いて照らした先に映し出されたのは、草むらの上でスヤスヤと気持ちよさそうに眠る桐生君の姿だった。