キスから始まる方程式
「A組の……南條詩織(なんじょう しおり)……」
「っ!? 南條……南條詩織……?」
「あぁ……」
目をそらしながら、翔がコクリと頷く。
南條詩織……。
想像以上の人物の名前に、再び固まる私の体。
だって無理もない。
南條詩織といえば、月島高校の誰もが知っている校内一の美少女なのだから。
もちろん男子からの人気も絶大で、彼女に告白する男子生徒は後を絶たないらしい。
それでも彼女が恋人を作らないのは、誰か他に好きな人がいるからではないかとひそかに生徒達の間で囁かれていたのだが、その相手がまさか翔だったとは……。
受け入れがたい現実に、クラクラとめまいがした。