キスから始まる方程式


「な、七瀬、大丈夫?」

「ん、大丈……夫っ」



隣で着替えていた親友の麻優が、驚いた顔で問いかける。


ケホケホとむせながらそれに答えると、慌てて持っていたペットボトルを熱くなった頬へ押し当てた。



やばい……。キスって言葉聞いただけで心臓が飛び出そうっ……!


このあと桐生君と会わなくちゃいけないのに、いったいどんな顔して会えばいいの!?



今こうしている間にも、一緒に帰るため桐生君は校門のところで私の部活が終わるのを待っているはずである。


だがしかし、今のこの状態ではとてもではないが普通に顔を合わせられそうにない。



「好きな人とキスするのって、やっぱ憧れちゃうよねぇ」

「うんっ。すっごく幸せなんだろうなぁ……!」



うん……そうだよ。すっごくあったかくて甘くて幸せ……。


私も昨日まで知らなかった。好きな人とのキスが、あんなに幸せなものだなんて……。



後輩達の会話に答えるかのように、心の中でそっと呟く。


そんな私を横目で見ていた麻優が、ニヤニヤと意味ありげに笑いながら話しかけてきた。
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