キスから始まる方程式
「ふ~っ、危なかった~」
部室の扉をバタンと勢いよく閉め、俯いたままそっと胸を撫で下ろす。
部室から逃げて来たのはいいけど、この後どうしよう……。
やっぱ桐生君と会うの緊張するよ~っ。
まだ熱く火照っている顔を冷ますようにパタパタと手で扇ぎながら、何気なく顔を上げる。
「っ!!」
ドクンッ
すると、突然眼前に現れた人物に私の足がピタリと止まった。
それまでの幸せな気持ちが一変、戸惑いへと変わる。
翔……。
恐らく部室へと向かっているのだろう。
部活を終えた翔が、肩で顔の汗を拭いながら歩いている姿が目に飛び込んできたのだった。