キスから始まる方程式
「七瀬……可愛い」
唇をゆっくりと離した桐生君が、キスの甘さでトロンととろけるような瞳になった私を見て嬉しそうに呟く。
気持ちが止まらなくなってしまったのか、桐生君がもう一度口づけようと瞳を閉じた瞬間……
「ね~ね~、このあとどっか寄ってく?」
「行く行く~! 何食べよっか?」
校門の方から楽しげに会話をする女子生徒達の声が聞こえてきた。
「っ!」
「おっと」
女子生徒達の声に弾かれるようにして桐生君から離れる私。
あ、危なかった……っ。
ドキドキと超高速回転を繰り返す胸を押さえ、真っ赤になって下を向く。
しかしそんな私の手を桐生君が強引に引っ張り、そのまま何事もなかったかのように無言で歩き始めた。