キスから始まる方程式
ガシャンッ!
持っていたプラスチック製のペンケースが、派手な音を立てて床へと落ちた。
「七瀬、本当にこれでいいの?」
「……」
「七瀬? 七瀬っ、ペンケース落ちたよ?」
「えっ? あ、あぁ、ごめん……」
固まったままの表情で、ペンケースを拾おうと腰を落とす私。
『告白されてOKしたってすっごい噂になってるよ』
先程の麻優の言葉が、ひたすら頭の中をループしている。
まさか……。
ペンケースをつかんだ指先が、カタカタと音を立てて震えていた。
まさか……そんな……。
そんな私の様子を見ていた麻優が、驚いたように目を見開いて私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「七瀬、もしかして知らなかったの?」
「えっ? いや、まぁ……私には関係ないし……」
嘘……。関係ないはずない……。
「ごめん麻優、私急いでるから先帰るね……」
「えっ? あ、ちょっと七瀬ってばー!」
麻優の制止もきかずに、震える手を押さえながら一目散に翔の教室へと走り出した。