キスから始まる方程式
え……? やだ、まさか……桐生君一目惚れしちゃった……とかじゃないよね?
ずっと固まったままの桐生君に、私の不安がどんどん膨らんで行く。
よく見ると桐生君の顔は青ざめ、額には大粒の汗が浮かんでいた。
「ね、桐生君、具合悪いの? 大丈夫?」
「っ!」
私の言葉に我に返った桐生君が、ハッとしたようにこちらを向く。
「い……や、べつに……なんでもない」
「え? でも……」
桐生君の様子を見る限り、とても大丈夫だとは思えない。
明らかに尋常じゃない様子に心配になった私は「顔色悪いよ?」と、桐生君の額に触れようと手を伸ばした。
パシッ
「っ!?」
「……あ……っ」
だがしかし、私の手は桐生君の額に届くことはなかった。
無情にもその桐生君自身の手によって、払い除けられてしまったのだった……。