キスから始まる方程式
なんかこっちに向かって来るけど……。
教室の入り口、間違えてるわけじゃないよね?
周りの生徒達に嫌気がさして教室から出て行こうとするのならわかるのだが、明らかに迷いのない颯爽とした足取りで窓際に向かって歩いてくる工藤さん。
背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見据え、カツカツと小気味よい音を立てて歩くその様は、工藤さんの名前の通りなんとも凛々しくて美しかった。
教室中の誰もが見つめる中、突然ある人物の席の前でピタリと工藤さんの足が止まった。
思いもよらない展開に、再びドクドクと心臓が騒ぎ出す。
異常な程にシンと静まり返る教室。
それがまた余計に、私の奥底に眠る不安を掻き立てた。