キスから始まる方程式
「翔(かける)……顔が見たいな……」
一戸建ての二階にある翔の部屋を見つめ、そっとひとりごちる。
明かりがついているから、きっと部屋にはいるのだろう。
「出てこい……出てこい……出てこい……」
まるでおまじないのように、誰にも聞こえないような小さな声で繰り返し呟く私。
だけどいくらそんなことをしても、当然翔が気付いてくれるわけなくて……。
「バカみたい……私……」
突如襲った虚しさと切なさに、立ち去ろうと足を踏み出した時
ガラッ
「!」
突然部屋の窓ガラスが勢いよく開き、翔が顔を出した。
「ばっか! お前こんな寒い中、そんなとこに突っ立って何やってんだよっ」
「翔っ……!」
……届いちゃった! 私の気持ち!
まるで自分の思いが翔に通じたようで、ものすごく嬉しくなる私。
「雪降りそうだと思ってたまたま外見たら、いきなりお前がいるんだぜ?すっげービビッたっつーのっ」
「ご、ごめん……」