キスから始まる方程式
気まずい沈黙が2人を包み込む。
周りの木々のざわめきや小鳥の鳴き声がうるさいくらいに耳に響き、先程の音の無い静寂な世界がまるで嘘のように感じられた。
……やっぱり抱きしめられたように感じたのは、私の気のせいだよね。
しばらく自問自答を繰り返した後、結局私が辿り着いたのは“そんな現実あるわけない”という絶対的な確信。
やはりどう考えても、彼女持ちな上に私のことを避けている翔がそんなことをするとは到底思えない。
心の中で「だよねだよね」と1人納得していると、突如翔が私の目の前に近寄り背中を向けしゃがみ込んだ。
「ほらっ」
「え?」
「保健室まで連れてってやるから、早く乗れよ」
「えっ? えぇっ!?」
ここ、これってばおんぶってこと!? そんなの無理っ!……ってか絶対ダメだってば!!
「だだだだ、大丈夫だから! いいっ! ちゃ、ちゃんと自分で歩けるし!!」
口をパクパクさせ顔と両腕をブンブン横に振りながら、翔の申し出を全力で断る私。
翔は何事もなかったかのようにすっかりクールな表情に戻ってしまったが、私はまだまだ絶賛動揺真っ只中。
そんな状態で更におんぶだなんてあまりにも刺激が強すぎて、想像しただけでも口から心臓が飛び出しそうだった。