キスから始まる方程式


「じゃ、俺、大内先生探して来るから」



私とは目を合わせずに、先程の話を断ち切るように翔が突然踵を返す。



「あっと……、鞄のこと忘れてた」



翔の足もとに置かれていた私の鞄に気付き、それを持ち上げる翔。


ここまで私をおんぶしながら、一緒に肩に掛けて持って来てくれていたのだ。



「んじゃ、ここに置いとくから」



そう言って座っている私の足もとに鞄を置こうとした瞬間、翔の動きがピタリと止まった。



……? 翔、どうしたんだろう?



屈んだままの体勢で相変わらず動かない翔。


怪訝に思った私は、体ごと首を傾けて翔の顔を横から覗き込んだ。



「翔、どしたの?」



私の問いかけにハッとしたように、翔がピクリと肩を震わせる。



「あ、いや……えっと……これ……」

「ん?」



なんとなく驚いた顔をしている翔の視線を辿っていく。


するとその先にあったのは、私の鞄につけられ可愛らしくこちらを向いている“くまんちゅ”の限定レアマスコットだった。

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