線香花火
「〝好き〟って気持ちが透けて見える。ガラスみたいな、ただ透明な恋みたいってすごく思った。そんな高校生活、自分は送らなかったから、とにかく羨ましいなぁって。あと、由起子ちゃんがすごく大人びていてびっくりもしたけど。」
「…大人びて、ないと思いますけど。むしろガキっつーか…。」
「あはは。確かにちょっと幼い感じもするけど、そこも含めて全部好きでしょ、大輝くんは。」
「っ…。」

 真っ赤になる大輝を見つめていると、もっとからかいたくなる衝動に駆られるが、これ以上やっては少し可哀想な気がする。自分だけ好き放題色々なことを言ってしまうのも、何だか悪い気もする。

「あの。」
「ん?なぁに?」
「澪波、さんは…。」
「うん。」
「聡太、の、どこが好き、なんすか?」
「えっ!?」

 場にそぐわない素っ頓狂な声が出て、顔まで熱くなってきたのは澪波の方だった。

「そ、そんなこと知りたいの?」
「…ゆっこが、好きな奴だから。」
「え?あ、あー…聡太言ってたなぁ。でも、私の思う聡太の好きなところと、由起子ちゃんの思う聡太の好きなところは大幅にずれると思うけどなぁ、私。」
「…どういう意味ですか?」
「由起子ちゃんに見せてる聡太と、私に見せてる聡太は同じ聡太の部分もあるけど、結構違うような気がするから。」
「…ゆっこは、かっこいいお兄ちゃんだっていつも言ってる、んです、けど。」
「なんだそれー!聡太、お兄ちゃん気質じゃないと思うんだけどなぁ私。」
「優しい。」
「んー…それは当たってるかなぁ。声荒げて怒ったりしないよ。」
「かっこいい。」
「単純に見た目の話なら、大輝くんの方がかっこいいんじゃないかなぁ。」
「何でも聞いてくれる。」
「確かに話は聞いてくれるね。そこが由起子ちゃんにとってはポイント高いのかもね。」
「爽やか。」
「あー…それは違う。それは違うからちゃんと訂正しておいてね。普通に全力で爽やかの対極走ってるから。」
「そう、ですか。」
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