線香花火
* * *

 成績、常にトップクラス。いわゆるギャルっぽい女子とも、オタクっぽい女子とも分け隔てなく接する。見た目も可愛い系というよりはむしろ綺麗系で先輩後輩問わず一目置かれる小林澪波。それが聡太の幼馴染だった。

「どうしたらそんなハイスペック女子が凡人なお前の幼馴染になるわけですか、聡太くん?」
「…いや、澪波は努力家だし。俺は努力とかあんまりしないっつーか。」
「それで、そんな二人にそういう話は?」
「ないよ。それこそ、澪波は完璧すぎて恋愛対象にはならないって。」

 この時は本気でそう思っていた。バレンタインデーである2月14日。中学生ともなると付き合うだとかそんな話も出てきていて、何となくそんな話の流れに乗っかってみたらこれだった。
 澪波とは、もう長いこと会話もしていない気がする。1年生の時は同じクラスだったからよく話したが、クラス替えを経て、わざわざ会いにいかないと会えない澪波と会話する理由がなかった。陸上部の聡太と、学年委員長の澪波では帰りの時刻も異なっていた。

「んじゃ、今年も聡太はチョコ0かー。」
「いや、そんなんお前もじゃん。」
「そうだけど。」
「お、聡太!お前いいところにいた!」
「…なんだよ、委員長。」

 聡太のクラスの学級委員長はルックスだけで選ばれた。確か、後輩と付き合ってるとかなんとか言ってた気がする。(興味がないのでうろ覚え)

「これ、提出期限過ぎてたってこと今日気付いてさ。幼馴染のよしみでなんとか謝っといてくんない?」
「はぁ?」

 差し出された書類は、学年委員会で使う資料のようだった。つまり、提出先は澪波。

「あとは頼んだ!明日購買奢る!」
「てめ…!」

 聡太は委員長のこういうところが苦手だった。

「…はぁー…学年委員が集まるとこってどこだよ…。」
< 49 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop