線香花火
「一緒にベッドに入ったの、日曜が最後じゃん、今週。」
「ごめんね、先に寝ちゃって。」
「いや、それは仕方ないってわかってるし、仕事が早く終わらない俺が悪いんだけど、やっぱ起きてる澪波を抱きしめたいし、キスしたいなぁって。」
「ん…?まさか、寝てる私に変なことしてないよね。」
「ほっぺちゅーくらいなら変ではなくない?」
「変ではないけど、寝顔に自信がないから何も見ずにベッドにダイブしてほしかったかな。」
「だいじょーぶ。ちゃんと可愛かった。癒された。でも、こうやって俺と喋ってくれる方が癒される。」
「…1週間お疲れ様。いつも私が元気を貰う側だから、今日は癒す側として頑張るよ。」

 いつも聡太が澪波にするように、ポンポンと頭を撫でられる。あまり慣れない感覚に少しムズムズするものの、やっぱりその手が優しくて、自然に聡太の頬が緩んだ。

「それ、気持ちいい。もうちょっとやって。」
「頭、冷えてきてない?先に髪、乾かそうよ。やってあげるから。ちょっとドライヤー取ってくるね。」
「待って。」
「ん?」

 腕を引いて、離れかけた距離を詰めた。そして唇をそっと重ねる。

「今はこれで我慢するね。…正直もう1歩も歩きたくないくらい疲れてるから、ここから動かなくていいならすげー助かる。」

 澪波は小さく笑って、顔を近付けた。小さく音が鳴って、顔が離れる。

「すぐ戻ってくるから、我慢してね。」
「…もー…澪波ちゃん、可愛すぎなんですけどー!」
「はいはい、ありがとね。」

 顔を両手で覆う聡太の耳が赤いことを確認して、澪波はドライヤーを取りに立った。
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