魔女の瞳
午後五時。

この時間になると、そろそろ大半の部活もその日の活動を切り上げて帰宅し始める。

私は旧校舎へと足を運んだ。

時々すれ違う教師の「早く帰りなさい」の声に優等生の顔で答えながら、それを無視して木造の建物へ。

「…あらまぁ、これはこれは…」

校舎の裏手。

用務員の手入れすら行き届いていない放置された敷地内に、その旧校舎は時間が止まったように存在した。

夏の間に雑草が生い茂り、そのまま枯れてしまったのだろう。

乾いた音を立てて、枯れ草が風に揺れている。

素行の悪い生徒がここを溜まり場にでもしているのだろうか。

空き缶やお菓子の袋、果ては煙草の吸い殻までが捨てられていた。

だがそんな事を咎めに私はここに来た訳ではない。

むしろこんな所を溜まり場にして、よく今まで何も起こらなかったものだと感心している所だ。

…旧校舎近くまで来ると、ここの異常さが際立っているのがわかる。

甘い香りの香水をぶちまけたような匂い。

といっても、一般人にはそれは嗅ぎ取れない。

これは魔道の残り香とでも言うべきか。

魔道行為を行った痕跡というべき気配が、そんな残り香として魔女の私には感じ取れるのだ。

そしてその残り香は、かなりドギツイ。

中途半端な魔術ごっこでは、ここまでの匂いは残らないだろう。

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