新選組恋愛奇譚
「ついたついた。ここが土方さんの仕事部屋」

沖田さんがふすまを蹴る。

…………ってえええ!?

「ひっじかったさーん!!土方さぁぁぁん!」 

遠慮なく蹴るわ、ける。

あっけに取られる。

「うっせえええ!お前は普通に俺を呼べねえのか!」

そういって部屋から長い黒髪を高く結い上げた男の人がでできた。

美しいという言葉を表したような人だった。

涼しげな切れ長の目、すっと通った鼻筋に桜色の唇。

役者という方がしっくりとくるような人だった。

「ごめんなさーい。ついつい足がでちゃって♡」

「ついついじゃねーだろ、このドアホぅ!」

土方さんが怒鳴る。

なんでこの人達はこんなに残念だろう…

「で、お前。要件はなんだ。つまんねーことだったら叩き潰すぞ。」

沖田さんがニコニコと笑う。

「つまんないことはないと思いますけどねー。僕の小姓兼新しい隊士を紹介します。アヤトっていいます。」

名前が呼ばれたことに少し慌てつつ、頭をさげる。

「あやとって言いますれよろしくお願いしますっ」

「総司の小姓だと……?あの総司が小姓を雇うだと…?まさかお前らそう言う関係なのか…?」

土方さんの顔にあきらかにひいている様子が見受けられる。あ、女だってバレてない…?

「違いますよー。拾ったんですよ。だからしばらく可愛がることにしました。」

……私はペットか何かなんでしょうか…

「お前、幾らこいつが可愛い顔してるからって間違いおこすなよな…」 

「それは約束できませんねー」

沖田さんのニコニコ、怖いです…

「こいつは見ての通り凄く我儘なやつだ。並の根性じゃこいつの小姓は続けられないから、頑張れよ。」

「はいっ」

頭をさげる。

「だけどなー。小姓はいいが、新選組の隊士になるってことはある程度の剣の腕が必要だ。そこは大丈夫なのか?」

「アヤトの剣の腕は僕が保証しますよ。彼は化け物に育つと思います。アヤト、剣を抜いて」

言われるがままに剣をぬく。

沖田さんが剣をぬく。

そして構えのモーションをとった。

左か右が。考えるより先に本能でよける。

そして剣の切っ先を思いっきりつきあげる。  

「ね?言ったでしょ、化け物だって。」

私の剣の先は沖田さんの目の前に、沖田さんの剣の先は私の首元にあった。

「…………。化け物だな。」

土方さんがため息をつく。

「あやとの新選組入りを認める。わからないことは総司にきくこと。部屋は二人同室で。規則は守ること。さあ、帰れ」

土方さんがヒラヒラと手をふる。

「ありがとうございます、土方さん」

「ありがとうございます、土方さん。私頑張りますっ」

1つの山を乗り越えてホッとする。

「おいてくよ?」

「待ってください!」

私はスタスタといってしまう沖田さんを必死に追いかけるのだった。
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