花の名は、ダリア

ダリアの目が丸くなる。


「ソレ、どうしたの?」


「さっきぶつかったオヤジからスりました。
とりあえず、コレで今夜は宿に泊まりましょう。」


ダリアの目が輝く。


「スゴいわ。
ね、私にも教えて?
次からは私がスるから。」


ダリアが胸の前で指を組む。
ダリアの唇が綻ぶ。
ダリアの頬に愛らしいエクボが‥‥‥

クソが。

可愛さにムカつく。
無邪気さにムカつく。

自分を大切にすることを知らない彼女に、腹が立ってしょうがない。


「ダメ。
こんなロクデモナイコト、貴方は覚えなくっていいンです。」


肘を曲げて距離を詰め、彼女の額に自分の額をくっつけて、俺は囁いた。


「ロクデモナイコトは、全部俺がやります。
貴方は俺の腕の中で守られていればいい。」


可哀想なダリア。

俺が貴方を守ってあげる。

その愛らしい微笑みも。
その無垢な心も。
美しい髪の一筋さえも。

貴方自身の代わりに、俺が貴方を大事にするよ。



まぁ、ソレはソレとして…

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