花の名は、ダリア

「こんばんは、アランさん。
なにかご用?」


「あのー…
あのー…
お話がありまして…」


「もう夜更けだし、明日じゃダメですか?」


「あのー…
あのー…
皆がいる前じゃ、話しづらいと言うか…」


なんだかモジモジクネクネしながらも、アランは時折家の中を覗くような仕草をする。

あからさまに『どうぞー』と言って欲しそう。

追い返すべきか、招き入れるべきか。
クララはまたも迷っていた。

この様子なら、断ることは簡単そうだ。

でも‥‥‥


「…
アランさんは、お一人でココまでいらしたの?
それとも誰かと一緒に?」


ドアの外に視線を走らせながら、用心深くクララは訊ねた。


「あのー‥‥
あのー…
僕、一人で…」


アランのその言葉は、嘘ではないようだ。
街は静まり返っていて、人の気配はない。

落ち着かない様子で俯くアランをチラリと一瞥してから、クララはドアを大きく開けた。

彼の望むままに。

< 147 / 501 >

この作品をシェア

pagetop