花の名は、ダリア

同時刻。

ある狭い独房で、一人の男が懇願し、一人の男が嘲笑っていた。


「もうやめてくれ。
最初から無理だったンだ。」


「それを決めるのはおまえじゃない。」


「何度失敗すれば気が済むンだ?
何人犠牲者を出せば気が済むンだ?
もうやめてくれ。
お願いだから…」


「それを決めるのはおまえじゃないと言ってるだろう?
おまえは今まで通り、私に従っていればいい。」


「嫌だ。
成功の可能性があるならともかく、死者を増やすだけの実験に協力なんてできない。」


「面白いことを言う。
私はおまえに協力を求めているわけではない。
命令しているんだ。」


「…」


「それに、成功の可能性がないなんて誰が言った?
特別な実験体を見つけてある。
今は片方しか手元にないが、あんな子ネズミ、すぐに捕獲できる。
ハハハハハ。
栄光は目前なのだよ。」


高笑いを残して一人の男は去った。

もう一人の男は鎖に繋がれたまま、閉じられた鉄の扉を見つめた。

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