花の名は、ダリア


ごめんね?

忍者屋敷とか、ナメてたわ。
もはや立派なアミューズメントパークだわ。

アクリル製と思われる、薄く透明な筒の中を滑り降りながら、ソージは感心していた。

スライダー、まじ楽しい。

もちろんこんなモノ、ブっ壊して抜け出すことは容易い。

でも、やんない。

だってこの罠には、今のトコロ危険を感じないから。

緩い傾斜。
緩いカーブ。

罠にかかった者を傷つける気なんてサラサラない、安心設計。

おそらく出口にも、古い骸骨が刺さったトゲトゲが生えていたりはしないンだろう。


(とりあえず『対話』ってか?)


腕を組んで、さらに足まで組んで重力に身を任せながら、ソージは可愛い顔を酷薄に歪めて笑った。

ソッチがどういうつもりでも、結果は同じなンだよ、クソが。

傾斜がさらに緩くなってきた。

さぁ、ご対面の時だ。

筒から飛び出したソージは、やはりトゲトゲなんて生えていない床に、身軽に着地を決めた。

するとまた仕掛けが発動し、筒の出口が塞がれる。

その上自らの四方が、かなり厚めの透明板に囲まれているコトに気づく。

ガラス越しの逢瀬とか…

ロマンチストか、コラ。

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