花の名は、ダリア
Ⅲ
ごめんね?
忍者屋敷とか、ナメてたわ。
もはや立派なアミューズメントパークだわ。
アクリル製と思われる、薄く透明な筒の中を滑り降りながら、ソージは感心していた。
スライダー、まじ楽しい。
もちろんこんなモノ、ブっ壊して抜け出すことは容易い。
でも、やんない。
だってこの罠には、今のトコロ危険を感じないから。
緩い傾斜。
緩いカーブ。
罠にかかった者を傷つける気なんてサラサラない、安心設計。
おそらく出口にも、古い骸骨が刺さったトゲトゲが生えていたりはしないンだろう。
(とりあえず『対話』ってか?)
腕を組んで、さらに足まで組んで重力に身を任せながら、ソージは可愛い顔を酷薄に歪めて笑った。
ソッチがどういうつもりでも、結果は同じなンだよ、クソが。
傾斜がさらに緩くなってきた。
さぁ、ご対面の時だ。
筒から飛び出したソージは、やはりトゲトゲなんて生えていない床に、身軽に着地を決めた。
するとまた仕掛けが発動し、筒の出口が塞がれる。
その上自らの四方が、かなり厚めの透明板に囲まれているコトに気づく。
ガラス越しの逢瀬とか…
ロマンチストか、コラ。